監督:ベルナルド・ベルトルッチ
主演:タンディ・ニュートン
冒頭はアフリカでの悲劇の描写。特段の台詞はなく、独裁者のものと思しきポスターを貼る作業、怒りを込めた歌、学校での突然の出来事。タンディ・ニュートンが空を見上げるアクションからローマへと場面転換。そこからは基本的にはデイヴィッド・シューリスとの密室的関係が綴られる。シューリスの一方的で独りよがりな求愛は成就しないが、その後はなぜか関係が改善していく。そこに、刑務所に収監されているというニュートンの夫の話が絡んでくる。
正直言って、大変偽善的なお話だと思うし、ニュートンの役柄もいささか無邪気すぎやしないか、という気もする。
とはいえ、美しいショットの構成、ディープ・フォーカスによって描かれる二人の関係性の変化など、画面の見どころは枚挙に暇がない。
ピンクの花びらが戸棚に置かれているのを見つけたニュートンは、それをコップに入れて寝る。アントニオーニ『赤い砂漠』のごとく、画面手前に花びらをなめ、眠るニュートンを切り取る。次のショットで、ピンクの傘をさす男性のショットが続く。
同じように、ニュートンがバーそそぐビールの泡が、そのまま床掃除の洗剤へとつながる。
あるいは、シューリスが開くコンサートのシーンも素晴らしい。子供たちが退屈そうに聞いている光景が少し笑えるのだが、その後はニュートンが郵便を取りに行き、彼女の不在に気付いたシューリスの視線をくみとったニュートンの友人が、急いでニュートンを探しに行く。一方部屋では子供たちが庭のサッカーボールを探しに行き、、というふうにみんなバラバラに行動を開始してしまう。それらが特定の帰結をもたらすわけではない、というのが良いじゃないか。どこか馬鹿馬鹿しくも、ローマの街の片隅の緩やかな時間の流れを感じさせるのだ。
ラストの突き放し方にも少し驚く。