監督:イングマール・ベルイマン
3回目の鑑賞だが、劇場で見るのは初めてだった。大スクリーンで見ると、クローズアップが強烈な印象を持つことが実感された。
例えばエルランド・ヨセフソン演じる医師が、リヴ・ウルマンを鏡の前に立たせ、口元が欲求不満、鼻筋がどうこう、顎のラインが云々とこき下ろす場面では、リヴ・ウルマンの、その罵倒されている顔が大写しになるし、ハリエット・アンデルセンの様々な苦悶の表情も大写しにされる。過去のエピソードが語られるときに、そのエピソードの主人公となる女性の顔半分が光で照らされたクローズアップが挿入されるという構成上の技法も、やはり大スクリーンではインパクトが凄い。
ハリエット・アンデルセンの容態が悪化したときに、みんなでランプを片手に家の通路を行ったり来たりする名高いシーンも、やはりスクリーンで見ると、その夢幻的な映像世界をより良く体感できる。
ハリエット・アンデルセンが亡霊となって語り掛ける一連のシーンは、画面から徹底してアンデルセンの顔を排除する厳しい演出だが、彼女が抱擁を求める手を払いのけてしまうリヴ・ウルマンの弱さが際立つ。何回見てもこのシーンは本当に息が詰まりそうになる。
「手で触れること」が本作の重大なテーマとなっているのは明らかだ。
医師が診察する手を掴み、自分の胸元に置こうとするアンデルセン。
医師とウルマンの密会のシーンでは、沈黙のなか、医師がウルマンの顔をいやらしい手つきで触りまくる。
一方でイングリッド・チューリンは触れられることを拒絶する。
チューリンとウルマンが和解したかと思いきや、結局反目し合う関係に戻ってしまっているというのを、きわめてあっさりした手つきで描くあたりに、ベルイマンのシニカルさが絶頂を迎えている。
愛に焦がれながら、愛を拒んでしまうという不幸な女達は、ベルイマン自身の片割れか。
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