2022年4月19日火曜日

オペレーション・ミンスミート

監督:ジョン・マッデン

  ミンスミート作戦を企てたチームが、それほど広くもない暗い地下室で、祈るように電報を待つ。遅い、失敗か、と思っていたそのとき、電報が来て、見事に連合軍がシチリア島を奪還したことが知らされる。作戦室は拍手に包まれ、リーダーのコリン・ファースは大成功ゆえに呆然とその拍手を見つめる。あの戦争の様々な作戦室でみられたであろう風景であり、映画でもよくあるシーンだが、やはり何度見ても涙が出る。鳥肌が立つ。その後、二人の(無名の)男が、早朝の階段で語り合い、飲みに行こうといって、街中に消えていく。それをロングショットで撮る。良い終わり方。この手の密謀映画の常套ではあるが、満足感がある。
 でもそれだけである。
 この作戦自体は面白いのだが、しかしお話としては全く面白くない。死体を海に捨てただけである。おそらく製作者達もそれをわかっており、ケリー・マクドナルドとコリン・ファースの渋いロマンスを一生懸命演出する。でも、そんなものを見に来たのではない。。
 もっと群像劇的にすべきでないだろうか。例えば死体役に選ばれた路上生活者の生前は、回想で適当に処理されているに過ぎないが、むしろ彼が死んでいくまでを冒頭で描けば、それが対ナチス戦争勝利につながる作戦につながっていく「巡り合わせ」が演出できたはずだ。あるいはケリー・マクドナルドの恋人にしても、彼女との出会いをこそ描くべきではないのだろうか。そういうピースがつながっていき、国家規模の作戦になっていくのが、醍醐味なのではないのか。何だか最初っからすげぇ偉そうなコリン・ファースが、ひたすらすげぇ偉そうに作戦を進めていくだけでは、映画にならんだろう。
 ジョン・マッデンでもこれは無理。次行ってみよう。

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