2022年5月3日火曜日

アナザー・ラウンド

 監督:トマス・ヴィンターベア


 男性教師4人が、お酒の力を借りて、停滞した人生をもう一度輝かせようと試みる映画。
「もう一度あの輝きを」という男性映画はそう珍しくないが、「お酒の力で」というのは珍しいかもしれない。もちろん現実に、ちょっと酒を飲んだからって、いきなり面白い講義ができるほどハッスルできるとは思わないが、しかしフィクションとして、酒の力を借りた彼らが展開する講義はちょっと面白い。マッツ・ミケルセンが語るリーダーの資質の話(酒もたばこもやらない健康な人間が、実はヒトラーだった。「現実は思い通りに行かない」)、音楽教師は部屋を暗くして手をつながせて合唱させることで、一体感を生むことに成功する(デンマークの賛歌を唄わせるのは皮肉だろうか)。こうした講義の内容も含めて、彼らが渇望している、失われたイメージを形作っていく。
 後半はかなり厳しい展開だ。4人のうち1人が、悲劇の運命をたどる。酒によって人生が狂ったのではなく、むしろ酒が、人生の耐えられぬ空虚を曝け出してしまったとも言うような感じであるが、その描写は美しくもそっけない。このあたりの、哀しみや苦しみを描き過ぎないセンスというのが良いと思う。
また、マッツ・ミケルセンの方は、酒のせいで家庭を壊してしまう。しかしこれもまた、酒によって分断が明らかになってしまったと言って良いだろう。酒は、束の間、分断を埋める(キャンプでの涙のセックス)のだが、その効果は持続しないわけだ。
と、厳しい展開を置いたうえで、なぜか最後は華麗なダンスをシャープなカッティング・イン・アクションで決めてしまう。色々意見はあろうが、映画とはこうあるべきなのかもしれない。観客を信じればこその帰結なのかもしれない。

序盤の、ソフトフォーカスの手持ちカメラで、人物の配置を動かしていく演出は、さすがドグマ系というべきもので、2022年になると、ただ普通に巧い。
ライティングは全体的にローキーだが、キャンプでの光は綺麗だ。レストランで、妻が立ち去ってしまったあとのミケルセンの横顔の逆光なんかは、どうにも品のないショットでうんざりするが、これは佳作でしょう。

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