監督:フランソワ・トリュフォー
ジェラール・ドパルデュー、ファニー・アルダン
安定と平穏に満たされた結婚生活を送っていたドパルデューの元に、過去の女が現れる。その過去の女とは、「一緒にいたら破滅するが、一緒でなければ生きられない」という運命の女であり、(おそらくはそれなりに苦労して手に入れたであろう)「幸福」というベールを剝ぎ取ってしまう、真実の女である。彼女と再会してしまったら最後、元には戻れない。
かつてヌーヴェルバーグを牽引した監督達は、7-80年代の成熟期において、ブルジョワ一家の一件「平穏」で「幸福」な生活が、身体の奥底に隠していたはずの激しい情愛によって崩壊する/しそうになる過程を描いている(分野を超えた普遍的なモチーフでもあるだろうが)。シャブロルは一貫してそうだし、ロメールは『昼下がりの情事』を撮っている。『昼下がりの情事』と同様、本作もまた、妻はブロンドのショートカットで、ファムファタルは黒髪ロングである。
この映画を見たのは約10年ぶりで、10年前も破格の傑作であると思ったが、再見してもその確信は揺らぐことがなかった。
ルプシャンスキーの撮影には寸分の隙もない。ドパルデューの情欲が頂点に達して半ば心神喪失したかのようにファニー・アルダンに手をあげてしまう、名高いシーンがあるが、そこに至る直前、ドレスが破れて部屋に着替えに行くアルダンを追いかけるように、ドパルデューが家の中に入ってくる。このときの室内照明が凄い。
それにしてもドパルデューのキレ芸というか、ヤケクソ感丸出しの暴走演技は、『ソフィーマルソーの刑事物語』なんかでもやっているように、この人にしか出来ないものだろう。
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