監督:アルフォンソ・キュアロン
劇場公開以来、何度か見直しているが、やっぱり素晴らしい映画だ。
見事なアクション映画であって、切迫した状況における誰かしらのとっさの運動が映画をどんどんと突き進めており、それは時に衝動的な発砲でもあり、しかしまたある時には反射的に人を「守る」という行為としても現れ、またとっさに機転を利かせることで言語の壁を越えていく。
テロリスト組織の会議で、クライヴ・オーウェンが「公表しろ」と正論をまっすぐぶつけるあのシーンの素晴らしさ。
Ruby Tuesdayのかかる中、マイケル・ケインが妻を逝かせてやるというのも、どうしようもなく泣ける。
血しぶきの付着した画面、どこまでも視点に忠実なカメラの扱い。
「車を押しながら走る」という運動のエモーション。
数ある長回しで一番良いのはどれか。やはりクライヴ・オーウェンが泣き崩れるところだ。
シドという警察と対面するときのカッティング・イン・アクションが凄い。
構図、が全然決まっていない、というか、すごく大雑把なレイアウトだけ決めて、手持ちでフワ~っとした感じで撮っている感じがする。でもなぜかこの決まってない画面にとても惹きつけられる。その一要因として、間違いなく繊細な光の扱いが挙げられるだろう。とても素晴らしい。
また、構図がピシっといっていない、何か『ロング・グッドバイ』のような浮遊感のある画面に加え、画面に現れる牛やネコといった動物や、彫像、そして認知症の老婆、あるいは奥から車がやってきたりといった人物やモノの出入りが、画面の均衡を大きく乱してもいるだろう。とにかく全体的に不穏な画面なのだ。そしてそれがどうにも魅力的というか、ついつい見入ってしまう。
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