2013年3月21日木曜日

シャンヌのパリ、そしてアメリカ

監督:ジェームズ・アイヴォリー

素晴らしい傑作。アイヴォリーの最高作だろう。
冒頭の2階から見下ろすシャンヌと地上のビリーの視線が見事に交わらない。
あるいはその後、シャンヌがビリーへの贈り物としてあげた電車のおもちゃの面白さ。
何て完璧な掴みだろうか!

あるいは様々な学校で行われる授業のなんと魅力的なこと。
最初にビリーをクローゼットに押し込める女教師(その教師に母親が砂をかけるシーンの痛快なこと!)、フランシスの独唱、そしてLet it be!ちょっと反則なぐらいだけど、いやこれだけ見せてくれるんだから文句のつけようがない。

あるいはちょっとした細部の豊かさ。
フランシスがバスの中でシャンヌに声をかけるときのマフラーだったり、あるいはビリーが転校先で牛乳をうまくあけられなかったりという演出のつけかた、あるいは子供時代にシャンヌが出会う謎の少年のディレクションなんかも最高だ。

そしてラストショット。
日記の件でちょっとだけ揉めた家族三人を、そのままフォローして、三人が椅子に座るまで追うとこ。普通、途中でカット割るでしょう(笑)
でも割らずに、まったくもって最適な距離で、滑らかな横移動で、三人を追うこのカメラ。
そして突然三人が踊り始めて、それから日記の件などまるで無かったかのように仲良く池の方へと歩いていくのを、これまたワンショットで、徐々に俯瞰のロングになって、それで、終わってしまう。
このショットで終われる監督がどれほどいるか、とか偉そうな事は言いたくないのだが、しかしこの呼吸こそが映画だ。
そう、アイヴォリーは『最終目的地』のアイヴォリーなのだ。オマー・メトワリーとシャルロット・ゲンズブールが雨の中家に入っていくのを、たった2ショットのロングショットで処理してみせたアイヴォリーなのだ。まったくもって同じような感動が、このショットに凝集されている。それは感傷とは程遠い、もっと透明な愛だ。ちょっとクサいか。

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