監督:クロード・シャブロル
最初のショットがサンドリーヌ・ボネールがカフェに入ってきて椅子に座るまでのワンショットだが、ジャクリーン・ビセットの主観ショット気味になっている(厳密には違うとは思うが)。
この最初のワンショットには、ボネールが歩く姿、そして外から中へと入る運動、主観ショットといったこの映画において極めて重要な要素が凝集されていると言えるだろう。
この映画ではとにかくボネールの歩く姿が見事に「不可解」である。(邦題は『歩く女』の方がいいだろう(笑))
主観ショットでは、テレビ画面のショットがいくつかあるが、最も重要なシーンはボネールの視線でイザベル・ユペールを捉えたショットだ。これは初めてボネールがユペールの家に来たシーンで、お互いが完全に意気投合する前だと言える。そして過去の事件の話になったところで、ユペールがベッドの上に座って、ボネールの方を見る。このユペールをカメラがボネールの主観ショットで捉えるため、画面としては真正面からユペールがこちらを見ているという強烈な、そしてこの映画で唯一のショットとなっている。そしてここが結節点となって、ユペールとボネールの極めてブラックな共犯関係が築かれていくことになるだろう。
このシーンでふたりが過去の事件について晒し、しかも話の流れとしては見てる者からすれば、「このふたりは犯罪者なのかもしれない」という疑惑を持たざるを得ないわけで、異質のふたりが灰色の過去という共通点で結ばれる瞬間である。それがこの主観ショット&ユペールのカメラ目線の演出の正体である。
あるいは扉の開閉によって事態が展開する脚本のうまさ。初めてユペールが一家の家に入る時は、窓から強引に侵入する。この侵入の時はボネールとユペールの仲はほとんど深まっていないが、この強引な家への侵入のように、ユペールもまたボネールに強引にコミュニケーションを図っているのが面白い。
あるいは何度か出てくる玄関のショットの見事さ。白いカーテン。車を捉えたショットは全て素晴らしい。これは見事な傑作だろう。
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