監督:クロード・シャブロル
シャブロルによる解説がDVDにあったので、それに少し言及しつつ書こう。
まずイザベルユペールと子供が家に帰ると夫が帰還している、というシーンは映画におけるひとつの転換点であり、シャブロルはここで親子が玄関まで来て家に入るところをわざと長めに撮ったらしい。また息子の視線ショットによって寝ている父親を映している。
またシャブロルによれば、父親が寝ながら手がズボンの下にあるという点が、彼の今後を暗示しているらしい。知らんがな。
シャブロル自身が言及しているように、本作は主観ショットが非常によく出てくる。時に鍵穴からの光景としても捉えられるし、あるいはその光景が物語を動かす契機にもなっている。
特に夫婦の喧嘩を目撃する息子の視線ショットが非常によくできている。
あるいは扉の向こう、窓の向こうの風景も印象的に撮られている。
イザベル・ユペールが教室で歌ってみせるシーンでは、思わぬ長回しで極めて美しい窓の外からの画面として捉えられれている一方、そのあとカメラが窓の中へ入るのがあまり好みではない。
シャブロルいわく、外の世界と中の世界を対比させたのだとか。
終盤の法廷を中心とした描写はあまり面白いとは思えない。
イザベル・ユペールの顛末を暗示したガチョウの首切りシーンが面白い。それは「目隠し」という点でも実に印象的だが、あの巨大な被り物や、背景のナチのマークなどの視覚的なインパクトが非常に強い。この映画は全体的に地味で完結で簡素だが、このシーンと法廷の壁にある大きな絵画が非常に強烈な印象を残す。
0 件のコメント:
コメントを投稿