あの傑作『おもかげ』を撮ったロドリゴ・ソロゴイェンが2016年に撮った作品。
これまた見事な面白さ。この人は、人間のタガが外れる気まずさ、怖さを描くのが巧いんだ。肉体的な暴力は瞬間的だが、決して消えることのない暴力性がべったりとまとわりついているのがわかる。同僚をボコボコにする刑事に、女の扱いに慣れていない吃音持ちの刑事のタッグが魅力的。特に後者のリオネル・メッシのような佇まい。遺体のポーズを真似ることから事件の捜査を開始していくポリシーがまず面白い。捜査の過程も知性と直観のバランス感覚が素晴らしい。犯人の造型も見事に怖い。ネックレスやオレンジといった細部の扱いも良いが、唯一ある追走シーンがまた凄いテンションだ。暴力的な刑事と吃音を抱える刑事が、一気にボルテージを上げて犯人を追いかけるそのギアのかかりっぷりがたまらない。映画はこうでないと!
ラストシークエンスも素晴らしい。豪雨と車の組み合わせは、『おもかげ』でもやっていたね。
あえていびつなショット構成を狙っていると思うが、ちょっとこれに目が慣れるのに時間がかかった。が、後半はむしろとても安定したショット構成になっていたと思う。
ロドリゴ・ソロゴイェン、本物ですね。
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