2021年9月1日水曜日

リミッツ・オブ・コントロール

 ジャームッシュについては自分は完全に初心者で、数年前に『ダウン・バイ・ロー』や『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を見て、面白いなと思いつつ、生意気ながら自分好みではないな、と思っていた。
正直、新作も結構スルーしていた(←失格)が、『パターソン』は文句なしに素晴らしいと思った。が、それも含めて、なんかズルいな、こちらとしては全然付け入るスキがないなぁ、と感じていた。

しかし先日、レトロスペクティヴで『ゴースト・ドッグ』を見たら、オールタイムベスト級の面白さで、これは大変気に入ったし、この映画のイザック・ド・バンコレが主演なのであれば見るしかないと、DVDを借りて見た。

スーツがオシャレ、ホテルや美術館の空間、オープンカフェの店員とのやり取りの面白さなど、極めて表層的に楽しめる映画でもあり、同時に映画作家への目配せもある(ティルダ・スウィントンがウェルズやヒッチコックの映画を語る)。
たしかにブレッソンであり、ヒッチコックだが、しかし大真面目にこれらの作家を模倣しているという感じでもない。物語もひたすら「ハッタリ」を続ける映画であって、むしろ映画とはハッタリを如何に続けられるかの勝負だという宣言のように感じた。実際、見事に続け切っている。
神出鬼没のヌード女性(パス・デ・ラ・ウエルタ)の存在感が素晴らしい。映画のモチーフは極めて虚無的であるが、彼女の「遺体」に向けられた視線には熱がこもっていた。



0 件のコメント:

コメントを投稿