監督:デヴィッド・クローネンバーグ
ゴダールみたいに面白い。
リムジンの周囲をぬーっと廻り、ヤバすぎるオーラを放ったガードマン達をまるで『アウトレイジ』のファーストショットのように撮りながら、独特としか言い様のない角度でフィックスするファーストショットからして、もう傑作の予感しかしない。
突発的に起こる数々の現象は何らの伏線も無いまま、そして何の傷も余韻も残さぬまま消えていく。というこの構造自体がおそらくはこの映画のテーマでもあるだろうが、しかしその出来事達は極めて魅力的に撮られているではないか。
暴動、ネズミを投げる男たち、IMFの理事の襲撃現場、ボディガード殺し。
そういえばクローネンバーグが以前、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の演出について、銃で撃たれた遺体の姿を一瞬見せることで、その残虐性を引き出そうとした、みたいな事を言っていたが、今回はむしろ殺された者の姿を決して見せることがない。
洪水のようなセリフの数々も充分刺激的だが、しかしなんといっても被写界深度のめちゃめちゃ深い画面の豊かさこそ、この映画の最大の魅力だろう。
暴動の中を歩きながら車内に向けて話すボディガードの立ち姿なんて、全く見たことのない画だ。
あるいは適度でありながら異彩を放つカメラワークと持続。
サマンサ・モートンがグラスの水を飲むのを、手のアップからフォローして顔のクローズアップになり、背景に暴動が映り込む、というこのショットがとても気に入った。
床屋でのカット割りもいい。
カメラがパンしたあと、そのままカットを割らずガレージが開くとこなんかもゾクゾクする。
あと、言っちゃ悪いが、サラ・ガドンの乗った車が窓の向こうに現れるショットは、『ホーリー・モーターズ』の数億倍決まっている。
すっごい面白い対象を映しながら、常に周辺の出来事が視界に入ってくる。
バスケをする少年、ダイナーで絵か何かを描いている女性、フラッシュをたく記者、などなど。
今年のベストワン決定である!
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