2014年3月29日土曜日

ワイルド・アパッチ

監督:ロバート・オルドリッチ

二人の異人種が対峙するシチュエーション。これをいかにつくるか。
例えばブルース・デイヴィソンが巾着で歯を磨く光景をカ・ニ・テイ(谷啓じゃない)が不思議そうに見つめるショット。あるいは母親を殺された少年とウルザナの視線の交錯。その直前に母親の指輪を潔く渡す少年を見つめるウルザナの手下たち。息子のラッパを見て、座り込み、歌うウルザナを少しの間じっと見つめるカ・ニ・テイ。極め付けはラストのカ・ニ・テイの謎の仕草だろう。バート・ランカスターの右手を持ち上げ、おろす。ランカスターはこの行為の意味がわかってるのかわかってないのかよくわからないが。

夜のキャンプの美しい光。前半の砦におけるブルース・デイヴィソンにあてられた素晴らしい光。

ランカスターがアパッチ二人を後ろから追いかけるシークエンスが面白い。
ここではランカスターとアパッチの距離がどの程度なのかを示すショット、つまり縦の構図がなかなか出てこない。お互いの馬の疾走を並列して撮っていく。そして最後にランカスターが逃げていくアパッチに照準を合わせるところでようやく縦の構図が挿入される。
確かに「ふつう」だったら、縦の構図や俯瞰の挿入によってお互いの距離を見せる「べき」なのかもしれないが、むしろここでは追われるアパッチの慌てぶりと、しかし思うように馬が疾走せず鞭をたたきまくるランカスターの焦りだけを通して、この追走劇を描いているのだ。これは面白い。また一つ勉強になった。

上記のシーンのあとにランカスターの元へと隊列がやってくるロングショットが圧巻。

ブルース・デイヴィソンの空回りした正義感を描きつつも、それとは全然違うレベルで着々と出来事が動いていく恐さ。息のつけなさ。
それにしても、おっさんが一人小屋に立てこもって勇敢に戦うも、あえなく惨敗を喫するあのシーンのなんと冷酷な演出。
何より、犬の扱いが全くもって見事だ。三本の矢が刺さった犬の死体、それを見て覚悟を決める男。ここは『駅馬車』以来の強力な演出だろう。

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