監督:アンジェイ・ワイダ
モノローグシーンに一体何の意味があるのか、という事をあまり聞いてはいけないようなところがあって、いやひたすらここだけは退屈なのだが、一方でドラマパート、そして撮影現場のドキュメンタリー映像のやたら凝ったカメラワークなどはいかにも素晴らしい。
ドラマパート、例えばクリスティナ・ヤンダが青年と接触してから気になり、友人の話そっちのけで視線を青年の方へ向けている描写にしても、カメラの視点がしっかりしているので、青年にピントが合っていないとき、合っているときの描き分けがはっきりしている。こうした処理を見るとついつい安心してしまうぐらいには、僕は保守的な人間だ。知らんけど。
どう考えても夫のキャラクターが中途半端で、もはやいらないとすら思えるが、それでも最初のシーンで妻と友人を見送った後に涙をこらえる姿を捉えたショットなどは印象深い。
ここで注目したいのが、まず見送るショットがあり、その次に妻と友人が家を後にするややロング気味の美しいトラッキングショットを挿入してから、再び同じショットで涙をこらえる彼の姿を捉えている点だ。なにという事はない。しかし、これは正しいショットの連鎖だと思う。
ラストの川辺のシーンではいったん、撮影が中断するハプニングをドキュメンタリーっぽく描いているわけだが、これ、ワイダかなり遊んでるよね?
その文脈からして、いくつかのドキュメンタリーパートは、極めて深刻そうに挟まれるわけだが、このシーンだけは、「嘘で~す」と言わんばかりの擬似ドキュメンタリーであって、いやそもそも「どうしたんだ?」と深刻ぶるワイダの顔がふざけている(笑)
で、気を取り直して撮られた川辺のシーンは、何も言うことがないね。ひたすらに素晴らしい。水際の目の醒めるような映像美、ロングの使い方、そうかと思えば被写体に極限まで接近する手持ちカメラの迫力。素晴らしい。
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