監督:ウェス・アンダーソン
蓮實重彦が褒めてたからとか関係なく、予告編を見て非常に期待していたのだが、どうもノレない。縦横のカメラ移動にしても、別になんということはなく、あるいは乱暴に、というか時間稼ぎのように感じられるクローズアップがちょっと厳しい。
もちろん誰もが驚嘆するであろう入江を映した美しいショット、夜明け前のあの美しい湖とカヌー、黄色と赤の色彩感覚など、普通にいくらでも(楽しく)見ていられる画面ではあるのだが、しかしそれだけに一向に映画が走らず、どんどん減速していくことに失望を隠せない。
例えば森の中を逃げている二人が隊員達に見つかり、対決するシーンにしても、『イングロリアスバスターズ』の劣化版みたいな印象が拭えず、あるいはクライマックスにしても、あれだけ水の迫力を見せておいて、あれでいいんかい!という感じである。
稲妻の処理だって、ちょっと納得いかない。そもそもキスしたら唇から電流走りました、なんてなんにも面白くないし、そしてあれだけのために、中盤の集団での追走劇を雷で中断したのかと思うと、映画全体に対する不信感が募るばかりである。
つまり人物達はみなエキセントリックではあるものの、それは「エキセントリックな舞台」を彩る駒に過ぎず、結局のところ、彼ら一人一人の身体は全く露呈することなく、ウェス・アンダーソンの手のひらを走りまわるだけだ。ここに何の愛があるっていうのか。
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