2013年2月26日火曜日

世界にひとつのプレイブック

監督:デヴィッド・O・ラッセル

 クローズアップがとっても多く、時にそれが運動を阻害している、と言えなくもないが、そう言わせないだけのガッツとエネルギーがある。というより、確かにクローズアップが多いのだけど、視点は決してぶれるわけでもなく、無駄にカメラが揺れるわけでもなく、あるいは過剰なピント送りをするわけでもなく、つまり決して致命的なラインを超えることなく、肝心なところを外さないラッセルの気合いと、それに見事に応える素晴らしい役者陣によって130分突っ走って、走りきった。

 ジェニファー・ローレンスはまるで『フランティック』のエマニュエル・セニエだ。彼女がブラッドリー・クーパーの元妻がダンス会場にやって来た事に動揺してバーにスタスタ歩いていき、「ウォッカ頂戴」と言ってみせるまでを長回しとドンピシャの照明で捉えてみせるとき、あるいはその後何事も無かったかのように艶かしくエキサイティングなダンスを踊ってみせるとき、あるいはクーパーとの初デートにおいて、それまで凡庸にも単調な切り返しでのみ会話をしていたローレンスがティーカップを吹っ飛ばし、見事なカット処理でもって店から出て行くとき、あるいは彼女のメッセージに気づいたクーパーが雨に濡れた夜の舗道を疾走してみせるとき、あるいはクーパーの主治医がスタジアムで彼に遭遇して興奮してみせるとき、あるいはあらゆるジェニファー・ローレンスとブラッドリー・クーパーのダンスシーン、そしてそれまで不当にもあまりいい照明を当てられなかったロバート・デニーロが最後に見事な光の中で息子クーパーを説得してみせるとき、映画がどんどん加速していき、いつの間にか涙が流れている。そういう映画。
 たぶん再見するので、二度目見たらまた更新する予定。

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