監督:ダルデンヌ兄弟
手持ちカメラによって被写体を一見無造作に撮ることで、「リアルに」見せつつ、決して心理的に本当らしくなく、ひたすら歩いたり走ったり抱きついたりという運動を鮮やかに撮ってみせた『ある子供』に対して、この映画はいささか窮屈な印象を受ける。
僕にはこの映画のほとんどの画面には驚きがないと思う。
それは例えば病室でロルナが頭を壁に打ち付けるシーンを見ても、「過剰なリアリティ」が運動そのものの「光景」を上回ってしまっている。このシーンには画面の強度が、運動の軽快さがない。あるのは「まるで本当に頭を打ち付けているのではないか」という映画そのものとは無縁の驚きだ。
逆にロルナがクローディに水をやるシーンのワンショットはすごい強度だ。室内照明が嘘みたいに調和し、深いコントラストをつくりだし、ロルナがクローディに水をやる構図が、まるでひとつの絵画のように浮き出ている。
ラストにしても、これが映画的に優れているとは全く思えない。
森の駆け抜けるシーンがあるが、残念ながら駆け抜け方がつまらない。
想像妊娠をしている女性の強迫的な行動を撮っても、その行動を映画的に切り取ることができていないので、物語的な意味しかない。
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