2012年9月16日日曜日

刑事ベラミー

監督:クロード・シャブロル

これはかなり映画というメディアに厳格な作品ではなかろうか。
例えばこの映画には、これといった「あらすじ」がない。確かにあらすじを述べることはできるが、それは実際読んだだけでは、はっきり言ってとてもつまらないものだ。というのも、オープニングで見せられる死体を巡るミステリーは、早々に全く持って平凡な真相とともに解決されるのだし、ベラミーの弟もいろいろと企ててはいるものの、結局最後まで何も行動を起こさずに終わるのだから。

しかしこの映画はとんでもなく面白い。それは極めて細部が充実しており、人物達の一挙手一投足が面白く、それを捉えるカメラワークが、我々に見る喜びを教えてくれるからだ。
誰もが好きにならずにはいられないであろうスーパーの店員、マンホールに落ちそうになったベラミーが突然涙をこらえきれなくなる面白さ、あるいは妻の快活で優しさに満ちた仕草。二人が喧嘩して、妻がベラミーにビンタまで喰らわせたあとに、何事もなかったかのように抱擁を交わす二人を見る喜び。

あるいはベラミーが弟に怒って椅子から落とすシーンの面白さ。「殴ってやろうか!」⇒「どうせ兄貴はそんなことできないだろ」⇒「ほれ!」という、この間合いの可笑しさね。見なきゃわからないんだけど。

まるでそれまでの経緯などほとんど無視するかのように、その瞬間瞬間に突発的に繰り出される「殴る」、「泣く」、「抱き合う」といった運動の数々が、この何のドラマ性もないストーリーを走らせるシャブロルの手さばきは、なるほど遺作にふさわしい見事な出来栄えだろう。限りなく透明な映画。

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