2015年5月24日日曜日

マイ・プライベート・アイダホ

監督:ガス・ヴァン・サント

『ドラッグストア・カウボーイ』と比べると、とっ散らかってるが、その分瑞々しい。ともに盗みを働く仲間たちの、お祭り騒ぎのような暴れ具合がとっても可笑しい。キアヌ・リーブスが酒瓶を一口グイっと飲んで、それを仲間に放り投げ、仲間がキャッチして、もう一人がくわえてるタバコを取りあげ、そのまま調子よく階段を上っていく、という一連の描写が、いかにも楽しいインディ映画だ。

それでいて、『ドラッグストア~』同様に、もの悲しく、切ない。
家族のような仲間と、その別れ。最後に車に乗せられて運ばれるという帰結も、『ドラッグストア~』と共通している。
あるいはホームビデオによるノスタルジックな過去の映像。

あるいは自然風景の描写。美しい風景であると同時に、それが主人公の心象風景として何度も反復され、サイケデリックな雰囲気すら獲得していく。
ある景色に捕らわれたようにぼーっとする描写というのも、『ドラッグストア~』や『誘う女』に出てきた。

夢の中でリバー・フェニックスがキアヌ・リーブスに告白して、抱擁を交わすシーンが、非常にシンプルでありながらもっとも感動的だと思う。うまいなーと思うのは、この夢のシーンが終わってリバー・フェニックスが目を覚ましたときに、彼自身のリアクションを撮らずに、バイクが停止しているところにパトカーがやってきて・・・という展開を速攻で持ってくることで、わかりやすい余韻(キアヌ・リーブスへの思いを隠して苦しんでいるのだ、という)をつくらずにあっけなく進んでいく点。


アメリカの田舎の風景とともに、イタリアの田園風景も出てくる。この田園風景がまた魅力的だ。

リバー・フェニックスの神経質そうな立ち振る舞いは、少しドゥニ・ラヴァンを思わせたりもするが、あれほど”即物的”でも”本能的”でもない。何とも言えぬもの悲しさがある。

それと、街並みの切り取りかたがやっぱり素晴らしい。キアヌ・リーブスとリバー・フェニックスが入り浸るカフェを外から映したショットなんか最高だ。その中で仲間たちが一方的に喋りまくるのを無造作につなげたような描写もたまらなく良い。

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