2015年5月22日金曜日

キングの報酬

監督:シドニー・ルメット

久々に再見。じわじわと面白くなりそうで、えっ?てぐらいあっさり終わってしまうあたり、「食い足りなさ」は残るが、この「虚をつかれた感じ」こそがリチャード・ギア演じる主人公の最終的な帰結に一致するのではないか。

選挙コンサルタントを描いた映画としては、最近では"NO"があった。冒頭では南米の総選挙を前にした候補者の"Say No!"という演説がある。

音楽に合わせてビートを刻むリチャード・ギアの姿が何度も挿入される。これが彼の集中力を高めるやり方なのだろう。”候補者を当選させる”ことだけに集中して、仕事に取り掛かる。その仕事を行う場所である彼のオフィスは、やたらと天井が低く作られている。彼の相棒的存在である分析家のアジトも非常に狭い。この映画における室内のシーンの多くが、そんな狭窄感に包まれているように思う。その狭い世界の中で、候補者を政治の世界に送り込む、つまり"POWER"を操作するのが、彼の仕事であるわけだ。
ニューメキシコ州知事候補のCM撮影を行っているシーンで、モニタールームからスタジオにゆっくりと降りてくるリチャード・ギアの姿が、その揺るぎない自信と、選挙コンサルタントと候補者の力関係を一瞬で表象してしまう。

だが映画が描くのは、とことんまでにout of controlな現実世界だ。彼の知らぬところで陰謀がうごめき(しかしその陰謀の描写のなんと味気ないことか(笑))、選挙は予想外の結果を見せる。それをテレビ中継で知った彼は、呆気にとられ、ジュリー・クリスティと見つめ合う。この最後の二人の演技が大変素晴らしく、このショットですべてを許してしまう。

シークエンスはじめのロングショットがどれも素晴らしい。空港でのジーン・ハックマンとのやり取り、ホテルのカフェでジュリー・クリスティーにあてられたキラキラとした照明の美しさ。


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