2012年10月21日日曜日

厳重に監視された列車

監督:イジー・メンツェル

物凄い傑作。一つ一つのショットの圧倒的な強度、美しさ。もう本当に全てのショットが美しいのだが、その中でも雪の中を走る蒸気機関車のショットをあげておきたい。
また、美しいショットのつなぎ方がいわゆる王道の映画とは違う、独特の間をもってつながれていくのだが(例えば女車掌のマーシャがミロシュにキスしようとすると電車が走り出してしまうとびきりに可愛い描写のカットの割り方、持続時間)、そうした「間」が決してヘタクソな学生映画のそれではなくて、時の流れが少しだけゆっくりになるかのように、そしてこう言って良いのであれば、「魔法にかけられた」かのような印象を残す。

そしてそのようなちょっとしたショットの持続、カメラの寄りで紡がれる空間と時間の、なんて濃密なことだろう!
女たらしの駅員が電報係(クソかわいい!!)と情事に至るショットでは、電報係がゆっくりと仰向けに体を寝かせる時にピタッと窓から差し込む光が彼女の顔にあたる。この濃密さ!美しさ!本当に幻想的だ!

美しく、そして濃密な空間/時間設計でありながら、同時にユーモアと優しさが映画全体を包み込むような感覚がある。それは上記したショットのふとした持続やカメラの寄りに、映画作家の「まなざし」を感じるからだ。端的に言えば、人間愛だ。

本当に素晴らしい。←もうこれしか言えません(笑)

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