2012年10月14日日曜日

マンディンゴ

監督:リチャード・フライシャー

オールタイムベストの一本。これほどまでに暴力的で過酷な映画は目にした事がない。
全編、強烈な光と影のどぎついコントラストの画面を基調としながら、時に手持ちによる移動撮影を織り交ぜながら、奴隷制度下のアメリカ社会の狂気性、そしてそんな中でも黒人に寛容にみえる主人公ハモンドの理性が吹っ飛ぶ瞬間を完璧に描き切っている。とにかく物凄い。

フルショット、ロングショットの圧倒的な強度は言わずもがなだが、そのなかで随所にインサートされる構図⇒逆構図の切り返しの見事さ。それは例えば、黒人のエレンとハモンドが初めて出会ったシーンにおける「内側の切り返し」であり、あるいはハモンドの馬車にのったエレンを妻のブランチが見下すように睨みつけるシーンのエレン⇒ブランチの切り返しであり、あるいは奴隷のミードが格闘でトパーズに勝利した後、しっかりとトパーズの遺体とそれを見つめるミードのクローズアップを逃さない繊細さだ。

ハモンドの妻ブランチのディレクションは相当にオーバーアクションだが、そのこっけいさが時に笑え、しかし時にその過剰さゆえに迫ってくるものがある。
ハモンドとブランチが初夜の翌朝に喧嘩するシーンでの鏡を使った見事な演出。とりわけブランチは映画において幾度となく鏡の中の姿を捉えられている。これはいったいどういう演出なのだろうか。

ラストの15分の圧倒的緊張感は、ほとんどキューブリックを思わせるレベルで、例えば必死にハモンドを止めようとするエレンを振りほどき、「自分が黒人であることを忘れるな!」と言い放つハモンドを移動撮影のワンショットで捉える演出が素晴らしく、また拳銃を構えたハモンドと奥の父親を捉えたパンフォーカス気味のショットも凄い迫力。

超一流のスーパー大傑作。映画史上ナンバーワンの一本だろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿