2012年10月18日木曜日

ウィークエンド

監督:ジャン=リュック・ゴダール

カッコイイ!そして美しく、そして力強い。
冒頭で夫婦が出発するシーンの隣家の家族との大爆笑もののバトルからして、この映画が傑作であること、そしてこの映画が何よりも運動的であることがわかる。
この映画には秩序がない(「私は文法を終わらせに来た。とりわけ映画の」という意味深なシーンがありますね)。そこでは警察官などまるで役にも立たず、道には横転した車がそこら中にあって、血だらけの死体まである。そしてそれらが美しい田園風景と人々の怒鳴り合いとクラクションをバックに映された画面の、なんとも言えぬミスマッチ感(笑)死の匂いが立ちこんでるんだか立ちこんでないんだか、たぶん立ちこんでいないのだろう。このなんともいえぬ居心地の悪さがゴダール印だ。
血にまみれた遺体がまとっている服がやたらカラフルでオシャレだったりするのもその居心地の悪さ故だろう。
あるいは、主役の夫婦は、そこに横転した車があろうが、死体があろうが、とにかく走り続ける。それは、これらの車や死体や喧騒を映した長い長い横移動の果てに、夫婦の車がそこを通り抜けて遠くの曲がり角を右に曲がってずーっと走っていくのをカメラが追い続けるというこの「持続」に見事に刻印されているだろう。

あるいはまた、「文法を終わらせに来た男」とその連れの女を追いかけて、そこらじゅうにひっくり返った車が散乱する中を主役夫婦が猛ダッシュする光景を、クレーン撮影で捉えた美しい画面。

あるいは人々の怒鳴り合いの素晴らしさ。衝突事故で喧嘩する女とトラクターの運転手が、なぜか主役夫婦を一緒に罵り合い、挙げ句の果てには抱き合ってしまうという嘘みたいな、しかし夢のような(と言ってしまいたい)シーン。

ラストの銃撃戦も見事な出来栄え。前編合わせて3つあるクローズアップはどれも素晴らしい。
あらゆるものを破壊しながらも、それでも残り続ける運動、肉体、生!このゴダールは本当に素晴らしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿