2023年1月7日土曜日

ケイコ 目を澄ませて

 監督:三宅唱


全体的に感動よりも違和感の方が強く、あまり入り込めなかったのだが、高架下の、まるでクラブシーンのようなライト点滅のショットが良い。HIP-HOP好きの三宅監督ならではのショットかもしれない。
それと、ラストに、対戦相手を顔を合わせることでケイコの心理が好転する展開が胸を打った。
のだが、このラストも含めて、(『ドライブ・マイ・カー』もそうだったが)いわゆる「心を閉ざした若い女性が、だんだん感情を表に出していく」というドラマツルギーが、ふつうに紋切りすぎるんじゃないのか。この映画ではケイコが難聴という設定になっていて、中盤で日記が読み上げられることで、「実はこんなに色々考えていたんだ」みたいな気付きを与える構造になっているのだが、だから何なのかという気になってしまった。
というより、ケイコの心理ドラマとして作ろうとしているのかがイマイチわからず、ケイコがボクシングを続けるかどうかで引っ張る意味がわからなかった。なんか色々人が出てくる割に、誰も重要な役割を果たしていないような。

ボクシングジムの人間達も、大事なところは結局、強引に口で言うというのは甘えじゃないのか。「家から遠い」で怒るのも意味がわからない。
相手が難聴であることを知らないがゆえのディスコミュニケーションの例がやたら出てくるが、これも羅列されているようにしか思えず。

あと、COVID-19が流行っているという設定っぽいのだが、物語上はCOVIDがなくても成立するし、設定のわりに病院で普通にマスク外してたり、そもそもお見舞い禁止なんじゃないかとか、気になって仕方なかった。
相変わらず、「無表情で警句を吐いてくる医者」像も日本映画ならではの不愉快な描写。「頭のレントゲン」というのも、ちょっとねぇ(MRIのことかしら)。


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