2021年3月7日日曜日

第一容疑者 EP1 後編

 後編は、面通しの場面から始まる。
ヘレンミレンが持つタバコの煙、その奥で事態を見るトム・ベル。面通しでは結局思惑通りに行かない。そうとわかった瞬間に、トム・ベルがさっさと部屋をあとにするのを画面奥に捉えたショットで処理。冒頭から痺れるような展開である。

 後編の見せ場は刑事課総出で容疑者マーローを追い詰める尾行シーンだろう。マーローがカフェに入っていったタイミングで、自転車で尾行していた刑事とタクシーに乗った刑事が交代する場面をはじめとする小気味良い演出。

 あるいは男性社会で戦う女性たちの連帯も見え隠れする。
オールダムの娼婦たちとのやり取り、ヘレン・ミレンとゾーイ・ワナメイカーの単純には済まない緊張感のある関係性。
感心したのが、ヘレン・ミレンがマーローを尋問している間、部屋でほかの男性刑事たちが待機している場面。刑事達は、「あの変態野郎め」と口々にマーローを罵る言葉を吐き合っては、お互いの「良識」をアピールするのだ。実際には、情報屋と関係を持っていた刑事の存在や、当初のヘレン・ミレンの抜擢に反対していた刑事などの存在を考えれば、この描写が実に皮肉をもって描かれていることは明白だ。男性のホモソーシャルなグループが、平常時に女性蔑視的な態度を隠さない割に、何かあると途端に女性の味方になる、あるいは加害男性を憎む、という傾向をうまくとらえている。

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