2014年1月1日水曜日

パンドラ

監督:アルバート・リュイン

主観ショット18、ドアの開閉15ぐらい
この監督は、この映画が監督としては2本目で、その前にはサイレント時代から製作や脚本を担っていたという。
そのためだろうか、中盤のクライマックスである、闘牛場でのシーンは、「いるはずのない人間を見てしまう」ことで闘牛士が混乱する、という嬉しくなるような映画的顛末である。
そもそもこの闘牛士は一体何のために出てきたのか。エヴァ・ガードナーの元彼として突如現れ、
なぜか本番前に闘牛をしてみせるもののなんか滑ったみたいな空気になるぐらいだ。
しかしこの闘牛場でのシーンのためには、彼はガードナーの嫉妬深い元彼であり、またガードナーとジェームズ・メイスンの情事を目撃しなければならないわけだ。

黄色の使い方がとても良い。ガードナーのドレスやメイスンの宿の部屋のソファーなど。
あるいはラストの”The End”の文字の背景も黄色いカーテンであることからも、黄色の配置がこの映画において重要であることは間違いない。

それとこの映画の主観ショットはほとんどが、メイスンが見つめる雲やら帆やら海やら操縦舵であって、ヒッチコックの映画のようにその光景自体が何らかの疑念や誤解を生じさせたりするわけでもなく、ただ無意味な光景として提示されている。一方で冒頭の遺体の発見やバルコニーからの望遠鏡の光景にしても、それらは決してショットとして提示されない事からも、単になんとなく主観ショットを配置しているわけではなさそうである。

シネマヴェーラでの上映で見た。今の私は一回の観賞で映画の細部を有意味に語って見せるだけの能力はないので、いささか中途半端な言及にならざるを得ないが、しかしこの映画は傑作であると思う。それは一見すると下手な演出(メイスンの回想シーン(というかそもそも三重の回想構成にすること自体))や序盤の露出アンダー気味の照明が映画を弛緩させているように見えながら、しかし上記の闘牛場での見事な展開とカットの連鎖、あるいは美しい美術、ラストの鏡の扱いなどがけた外れの魅力を持っている。

0 件のコメント:

コメントを投稿