2013年6月8日土曜日

新学期操行ゼロ

監督:ジャン・ヴィゴ

『炸裂するウィークエンド』とかいう蓮實重彦のウィークエンド評があるけれども、この映画のスローモーションほど「炸裂」しているシーンもない。
視覚の力によって、うそをまことに変えてしまう恐るべき映画の力だよね、これは。

また、中盤の屋外を子供たちと新任教師が散歩するシーンがとても素晴らしい。
校長と教頭が子供たちについて話し合う会話をかぶせて、子供たちの走ったり転んだりする様子を活写している点において、きわめてカッコいい。もともとこういう、(時間的に距離的に)遠く離れた者の科白をかぶせて、ちょっとMTVっぽく(というか説明を最大限省いて)撮った映像がとても好きで、最近では『裏切りのサーカス』の序盤のシーンがまさにそれであって、あそこだけとても気に入っている。科白がかぶさることで、シーンが浮き上がる感じがいい。
それと、ここのシークエンスで、通りかかった女性をみんなで追っかけるというわけのわからないシーンがあるが、女性が逃げて角を曲がる直前までをロングで撮り、曲がる瞬間に彼女の足を映し、さらに追随する子供たちの足を映す、というこのカットの呼吸がとても素晴らしい。このシーンだけでなく、ここのシークエンスは全体として、「リズム」重視で撮られていて、たとえば子供たちがもみくちゃになって転がる横をバイクが通過したりとか、そういう工夫がなされている。

あるいはオープニング。二人の子供がお互いに手品やかくし芸を披露し合うシーン。こんなに幸福感のある描写ができてしまうものか。

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