監督:ジェシカ・ハウスナー
俯瞰ショットによって始まるオープニング。白い皿と黄色いスープがそれだけで印象的なテーブル席に、人々、まさに文字通り様々な人たちが集まってくる。その進行方向、ノイズ、これらを決して分節化せずに(だからといって良いというわけではないけれども)、提示する。やがて少しのズームによって、この映画の主役であろう二人、レア・セドゥとシルヴィー・テステューにフォーカスがあてられる。カットが割られ、カメラ目線で微笑むシルヴィー・テステューが捉えられる。このテステューの態勢、すなわち「斜め後ろを振り返る」という態勢がこの映画においては何度か繰り返される。そのベースにあるのは、対象を斜め後ろから切り取るというスタイルである。
たとえばシルヴィー・テステューの主観ショットで切り取られる、女性の発疹だらけの肩。あるいは警備員の主観ショットで切り取られるシルヴィー・テステューがよだれを垂らしたショット。
正面ではなく、斜め後ろから切り取る、という一つの映画文法がこれらのショットに結実している、と言ってよいだろう。
あるいは切り返しがすべて内側からであるということ。
とりわけ、シルヴィー・テステューと警備の男が、オープンテラスで見つめあい、会釈する場面の切り返しが印象的だ。青と白のパラソルと、望遠レンズ(?じゃないか、わかんない)で異様に浮き上がったような二人が交互に切り返されるこの2ショットが素晴らしい。
あるいは二人のキスシーンのカット処理の驚き。
レア・セドゥが車椅子を押して坂道を上がっていくのを、警備の男が手伝いに行く場面のカット処理もこれに酷似しているが、このようなシンプルでありながら、一人ひとりの動きが断片化して、周囲との関係が一瞬切断されるような対象の捉え方は映画の醍醐味の一つだろう。
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