監督:ジョン・マッデン
ジェシカ・チャスティン、サム・ワーシントン、トム・ウィルキンソン
この映画が圧倒的に勝利している理由は、ベルリンのパートでのサム・ワーシントンとジェシカ・チャスティン、マートン・ツォカスの三角関係を甘ったらしくせずに、視線と手の演出によってシャープに描いているからである。
診療所の前でのみ夫婦を装い手をつなぐ二人。距離が離れるとすぐに手を離すが、2回目の診療でチャスティンが動揺しているのを察すると、二人はもう一度手をつなぐ。
寡黙なワーシントンと、意外と気弱なチャスティンの関係のサスペンスは、任務後に開かれるパーティでも再現されるだろう。一緒にイスラエルを出ようと懇願し、ワーシントンが握ったチャスティンの手は、残念ながらすぐに離されてしまう。そこで彼は彼女と一緒になれぬことを悟り、孤独に生きていくことになる。このような手の演出は、もちろんスパイ映画としての情報の交換も含めて横溢しているが、ある程度はマシュー・ヴォーンの脚本が貢献しているのだろうと想像するが、そもそものネタが面白すぎるという感じもある。
イェスパー・クリステンセン演じるナチス党員の悪役ぶりも見事であった。