監督:ファティ・アキン
石鹸工場にアルメニアの難民たちがかくまわれている。主人公タハール・ラヒム(素晴らしい・『ある過去の行方』でも素晴らしい演技)もその一人だ。
タハール・ラヒムとその友人が、ネット越しに見える女性が着替える様子をみて発情し、風俗店に行こうと出かける。するとその道中に、チャップリンの上映会がなされていることを知り、タハール・ラヒムは一人、上映会の方に向かう。チャップリンの映画が、あまりに自身の経験と重なり、彼は上映が終わってもしばらく座ったまま動けなくなってしまう。すると自分がかつて経営していた店の従業員が現れ、しかもその従業員によって娘が生き残ったことを知る。
このような脚本。つまり、エモーションがエモーションを導く、美しい物語の流れ。
悲しみや怒りが、声を失った男の身体によってダイレクトに画面に刻印される。
オスマン→キューバ→アメリカと進むにつれ、最初は大きなシステムのなすがままになっていたタハール・ラヒムの行動も、よりアグレッシブに、また暴力性を帯びてくる、という明確なストーリー・プランも素晴らしい。
脚本と撮影が勝利しており、役者も素晴らしい。傑作だ。
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