2015年4月5日日曜日

2014.1~2015.3までの映画を振り返る

2013年についてはこっち

いろいろ書こうと思ったものの、なんだか忘れたものも多いので、良かったのを箇条書きで。

・プリズナーズ(米 ドゥニ・ヴィルヌーヴ)
 物語をただ進めるのではなくて、一個一個のシーンをスクリーンに刻印しながら進んでいく、その手腕が素晴らしい。全編にわたっての大雨のすさまじい存在感、終盤のジェイク・ギレンホールが運転する車の疾走、などなど。極上のサスペンス・ミステリーというのは、こういうのじゃないかな。
ちなみに同じ監督の作品『複製された男』は、駄作だぜ。



・デビルズ・ノット(米 アトム・エゴヤン)
 『プリズナーズ』同様、ある家族の子供がいなくなり、容疑者が逮捕される。『プリズナーズ』が真相にぐいぐいと近づいていくのに対し、こちらは映画の進行とともに真実がうやむやにいなっていく。その混乱ぶり、イメージの執拗さが、エゴヤンらしい傑作。いわゆる「極上のサスペンス・ミステリー」ではないけどね。



・エレニの帰郷(ギリシャ テオ・アンゲロプロス)
 昨日、ついにマノエル・ド・オリヴェイラが106歳で亡くなった。アンゲロプロスもこの作品を遺して亡くなってしまった。ベルイマンも、アントニオーニも、アンゲロプロスも、亡くなってしまった。
 それにしても、痛切。しかし痛切さの中に、軽快さもあり、謎めいてもいる。すべてが新鮮で、驚きに満ちていて、とっても感動する。『エレニの旅』の続編だけど、まぁ、あんま関係ないので、いきなりこっち見てもいいと思う。




・さらば、愛の言葉よ(仏 ジャン=リュック・ゴダール)
 シャブロルが亡くなったのは、数年前だったか。ヌーヴェルバーグの人たちで残っているのは、アグネス・ヴァルダと、このゴダールだけだ。満員の劇場で、3Dメガネをかける、という行為自体が、ゴダールに嘲笑われているかのようだけども、良かった。
 ゴダールとか、キューブリックとかの作品というのは、映画を見ている本数に限らず、この映画はこの人にしか撮れない、という感じがする、まぁ要するにとってもオリジナリティがあるわけで、今回も、ああゴダールだな、という感じなのだけど、でも、それにしても見事な3D映像でした。







・6才のボクが、大人になるまで(米 リチャード・リンクレイター)
 これは本当に素晴らしかった。いきなりColdplayの名曲Yellowがかかって、武装解除されちゃったのだけど、それから続くありふれた、しかしとっても愛おしいシーンの連続に、ああこれはずーっと見ていられる映画だと確信した。
 美しい時間の流れ。それは、12年間という長い時間で起きた変化でもあり、1分間の男女の会話を長回しで切り取ったショットでもある。さまざまな時間を、光によって、表情によって、声によって、感じ取ること。

・プロミスト・ランド(米 ガス・ヴァン・サント)
 絶好調ガス・ヴァン・サント。『永遠の僕たち』も素晴らしかったけど、今回は社会派寄り。貧しい田舎町での天然ガス採掘をめぐる物語。福島原発以降、この手の題材にはより敏感になってしまうが、この映画が素晴らしいのは、あらゆるシーンにおいてあらゆる人物を平等に扱っている点だ。さまざまな人々が、印象的だ。そういう映画は、なかなか見られるものではない。

・君が生きた証(米 ウィリアム・H・メイシー)
 上にあげた2作品と、この『君が生きた証』を一緒に見ること。それが多分現代で最も有意義な時間の過ごし方のひとつだろう。お互いにとても似ていながら、それぞれに個性的な物語、演出がある。特に『プロミスト・ランド』と『君が生きた証』の類似性はすごい。特にラストがね。








・ヴェラの祈り(露 アンドレイ・ズビャギンツェフ)
 処女作『父、帰る』から、ずいぶん輸入されるのに時間がかかった。しかも数々の国際映画祭で賞をとっているのに。『ヴェラの祈り』は、ものすごく荘厳で神秘的な匂いすら立ち込める美しい映像の連鎖でありながら、重大な出来事はつねにその裏で起きているという、ある意味では「何も語らない映画」であり、しかしそれ自体が様々なことを語ってもいる映画だと言える。






・神々のたそがれ(露 アレクセイ・ゲルマン)
 よくわかんないけど、すごかった!

・郊遊-ピクニック-(台湾 ツァイ・ミンリャン)
 よくわかんないけど、すごかった!


・ある過去の行方(仏 アシュガー・ファルハディ)
 『プロミスト・ランド』や『君が生きた証』が、中盤~終盤にかけてある一つの「嘘/真実」がグイっと物語を変転させるのに対し、この『ある過去の行方』、というよりアシュガー・ファルハディの作品(『彼女が消えた浜辺』、『別離』)は、次々と新しい事実が突き付けられ、そのたびに喧嘩が起きる。一貫している。本作はだから、前二作と比べて大きく前進しているわけではないとは思うが、しかし僕は今、ファルハディ監督の新作を一番見たいと思っている。



・マイブラザー 哀しみの銃弾(米 ギョーム・カネ)
泥臭い、兄弟の宿命もの。かなり面白かった。ラストも、そう来ますかと。『プロミストランド』的な、批評性をうちに秘めた穏やかな秀作もいいけど、こういう、ハードな殴り合いと罵倒合戦も、映画の醍醐味だよね。


・女神は二度微笑む(インド 監督忘れた)
とっても面白い。欠点もたくさんあるけど、その分良いとこもたくさんあって、総じて全面擁護したくなっちゃう映画だね。楽しい見せ場もたくさんあり、視覚的にも面白い。そして人物のキャラクタリゼーションがなかなか凝っているため、ユーモアも上々。楽しい楽しいアクションサスペンス映画っすね。もっと拡大公開されてほしい。



・自由が丘で/ソニはご機嫌ななめ (ホン・サンス)
この二本については、いちいち言葉を並べるのも野暮かも。
『自由が丘で』は、なんだかズレてる、なんか様子が変、という映画。でもそのズレや行き違いが、人と人が交流する楽しさだよね、と。まぁなんか、そういう映画だ。
『ソニはご機嫌ななめ』は、もう少しストレートというか、ああ、これをやりたいのね、というのが明確かな。僕は『自由が丘で』の方が好き。





・フランシス・ハ(米 ノア・バームバッハ)
あんまり覚えてないけど、ずいぶん面白く、そしてうまいなーと思った記憶がある。とにかく、小品なのに、すげー上手いんだよね。



2014年は、仙台メディアテークで見た、濱口・酒井両監督の震災ドキュメンタリーがとても素晴らしかった。それらと併映されたのが、カラックスの『ポンヌフの恋人』、そして溝口健二の『夜の女たち』で、どちらも凄すぎて圧倒された。「スクリーンで繰り広げられている出来事にただただ圧倒される」という意味では、この2本は最強だと思った。
加えて、新文芸坐シネマテークのクレール・ドゥニ『35杯のラムショット』も素晴らしかった。

IndieTokyo、というか、大寺眞輔さんがやろうとしているのは、アート映画を商業主義と対立させるのではなく、アート映画ならではのマーケティングを展開することで、それによってアート映画そのものの体験の質を向上させましょうということだと思っている。とりあえず、IndieTokyoの今後の活動に期待が高まっている。



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