2012年2月18日土曜日

『メランコリア』レビュー

監督:ラース・フォン・トリアー
 
もの凄い映画。実はトリアーの映画は初見なので、他の作品とは比べられないのだが、画面が物語を先導していくという得難い体験に思わず酔いしれる。
どういう事か。
例えば結婚式の途中でキルスティン・ダンスト演じる(噂にたがわぬ名演!)ジャスティンがいなくなってしまう。そして、画面は脱ぎ捨てられたドレスを映しだし、次に風呂に浸かるジャスティンの姿を映し出す。それまで観客が把握していた、想像していた「ジャスティン像」の半歩先を行くジャスティンの姿がそこにある。
 
あるいは第2部において、シャルロット・ゲンズブール演じるクレアが二階の窓から外を見降ろすシーンがあるが、ここでカメラはクレアの視線として、息子を引き連れメランコリアを見物する無邪気な夫の姿と、その遠く先で立ち尽くすジャスティンの姿を映し出す。それまで提示されなかった形式で持って、人物達を描きだし、さらにそれらを上から見つめるクレアの視線を意識させること。ここでも物語が画面によって生成しているのがわかる。
 
このように、常に常に、我々の想像の半歩先のイメージを映し出す神業によって、一見全く支離滅裂にすら思える「あらすじ」が、異常なまでにエキサイティングなサスペンス(!)として我々の心を掴んで離さない。
 
と、こんなことを書くのもばかばかしいくらい、ラストには衝撃を受けました。多分、ラストシーンはシャルロット・ゲンズブールよりも過呼吸に陥ってたと思う(笑)本当に、これほど鳥肌が立ったのは初めて。素晴らしい!ありがとう、トリアー!

0 件のコメント:

コメントを投稿