2023年8月19日土曜日

AVA (Directed by Lea Mysius)

 フランス映画界で絶好調活躍中のレア・ミシウス長編デビュー作。主演はノエエ・アビタで、傑作『午前4時にパリの夜は明ける』で神秘的な美しさをまとったホームレス女性を演じた人だ。大きな目が鋭い光を放つが、彼女は網膜色素症で間もなく夜盲症になる。そのことを医者に告知された彼女は、マフラーで目を覆って視覚に頼らずに歩くなどの訓練を始める。2作目の『ファイブ・デビルズ』でも嗅覚が異様に鋭い少女が出てきたが、視覚以外の五感へのアプローチが彼女の発想の源なのかもしれない、と考えるだけでワクワクさせられる。

さて、映画は物語の統一性よりも活き活きとした行動主義に彩られ、上記の五感モチーフも実際には大して重要性を帯びない、というところが長編デビュー作らしくて良いじゃないか。インディアンのような格好で、二人してヌーディストビーチの訪問客を次々脅して回る場面は『気狂いピエロ』を思わせるが、そのほかにも忘れ難いイメージが数多くある。最初に犬を盗むシーンの横移動と視線ショットの扱いも素晴らしいし、晴天の浜辺での仰角ショット、波打ち際の戯れなどなど。笑えるシーンもたくさんある。母親の話を聞くまいと目を塞いで歩くと看板に顔面を強打する場面、母親のセックスを子供たちを連れてみんなで覗く場面。やっぱりこの人は才能がある。

0 件のコメント:

コメントを投稿