監督:アンジェイ・ワイダ
ワイダ、90年の作。議員をやっていた時代につくったという。
そして撮影はロビー・ミュラー。
DVDで鑑賞したのだが、デジタルリマスターが素晴らしいのか、ロビー・ミュラーが素晴らしいのかわからないが、とにかく撮影が素晴らしく、引き込まれる。
コルチャック役の主演俳優が、なんというか頭部の輪郭が絶妙で、白黒の陰影の濃い画面に映えるのだ。
シンドラーのリストの直前に作られた映画で、あちらがクラクフで、こちらはワルシャワ・ゲットーが舞台。残虐描写は非常に少なく、むしろ本題は頑なに選別を拒否するコルチャックその人の姿を映すこと、そして孤児院の子供たちを活写すること。特に母を看病しているところをコルチャックに拾われた子供の、躍動的な姿、ゲットーの外の女性に恋をする年長の男の子、歯が抜けかけているとにかく愛らしい少年など。孤児院を舞台に喧嘩が巻き起こるシーンが素晴らしい。あるいは、これはコルチャックのアイデアだったのだろうが、子供たちによる裁判、そして子供たちによる演劇。こうした光景も、非常に落ち着いたショット構成で、過不足なくみせる。派手さはない。実際のところコルチャック先生は当時大変有名で、列車への行進も語り継がれているから、おそらくワルシャワ・ゲットー、あるいはホロコーストに関する逸話でも相当に劇的な部類に入ると思うが、にもかかわらず、あくまで数え切れぬ悲劇と希望の一コマに過ぎないような、非常に慎ましい演出で、撮るべきものを撮っているという印象だ。
ラストシーンへの賛否については、さまざまな資料を参照のこと。時間が経った今見ると、難癖がつく理由がわからないぐらい素直に感動するが。
以下、印象的なシーンを羅列。
湖のほとりのロングショット。
上記の拾われた子供が、母の死を目の当たりにして、思いっきり石を投げて窓を割るショット。
夜間、孤児院のスタッフが話し合う場面。
ザマホフスキーが孤児院出身の金持ちとして登場する場面。