2015年11月8日日曜日

バニーレークは行方不明

監督:オットー・プレミンジャー

素晴らしすぎる!これぞ映画だ。
「あらすじ」の緊急性に対する、現実世界の時間の多様さ。その多様さを生き抜くヒロイン、キャロル・リンレー。
緩やかなスリラー。完璧。


新居の入り口へと続く階段。その階段を軽やかに駆け上がっていくキャロル・リンレーの姿がまず印象的だ。これに対して、保育園でキャロル・リンレーがわが子を探そうと階段を昇っていくと、大勢の子供たちがその行く手をふさぐ。
このようにしてキャロル・リンレーがわが子を探そうとすればするほど、様々なキャラクターやイベントがその捜索を邪魔する。この「邪魔」こそが、まさにこの映画のもつ多様性であるだろう。
気味の悪い家主の存在、クレイジーな保育園長、ヒロインをバーに誘って会話に興じる警部、あるいは子供が失踪したニュースがたちまちThe Zombiesのライヴ映像に変えられてしまうこと。そのThe Zombiesの曲がBGMとして映画全体のムードを脱臼させてしまうこと。あるいはそうした「邪魔する能力」を最後の最後でヒロイン自身が披露すること。
物語が決して一直線には進まない状況に対して、カメラもまた流麗な動きでもって戯れる。



キャロル・リンレーが病院から抜け出すシーンの、ベッドからすり抜ける身のこなしが何とも素晴らしい。